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舞台美術〜物語の世界へ〜
「さあ、これから仕込みだあ〜。」と劇場入りすると、
目の前にあるのは、空舞台。
何もない、ガラ〜ンとした殺風景な板の間(?)です。
そこにセットを建てこんでいって、
部屋にしたり、山の中にしたり、未来都市にしたり、抽象的な空間にしたり、
…としていくわけです。
これが素敵に出来上がると、そこに立つ役者は、俄然楽しくなってきます。
なぜって、それまでは殺風景な稽古場で、
「このパイプイスがテーブルのつもりね!」って感じでやってきてますから。
そういえば、昔、見学したテレビドラマのリハーサルでは、
テーブル代わりに段ボール箱使ってましたねぇ。
お客さんを芝居の世界に引き込んでくれる舞台美術は、
それ以上に役者の方を引き込んでくれているのかもしれません。
ですから、お客さんと役者、双方のためにも、舞台美術はとっても大事。
センスを問われるところでもあります。
これも、低予算でいこうと思えば、自分たちで作ります。
あまりリアルなセットにしたくない場合(あるいは出来ない場合)は、
デザインパネルを立てることが良くあります。
パネルは、ベニヤ板と角材で作ります。
そして、デザインにしたがって色塗りをします。
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このように、パネルだとか、大道具のイスやカウンターテーブルなどを、
木材から作っていくことを“たたき”と言いますが、
たたきの日は稽古の合間にとるので、運悪く雨が降ったりすると大変です。
少ない予算で動いていれば、たたきは役者仲間の家の
近所の公園や空き地などで行うので、当然、屋根なんてありません。
その役者のお母さん手作りのゴミ袋製カッパを
被っての作業となるわけです。
それでも、自分たちが濡れるのは、まあ良いとしても、
色塗り作業に困難をきたしますし、
なんとか塗れても、今度はなかなか乾いてくれません。
塗った面同士がお互いにくっついてしまわないように、うまいこと重ねて、
またまた、その役者のお母さんにお世話になって、
庭に置かせてもらったりするのです。
色々と苦労があるのです。
たとえ風が強くても、
その日のうちにたたいてしまわなければいけないので頑張ります。
塗ってる途中に、風で飛んだパネルに襲われて、
ペンキだらけになってしまう人も…。
色々と苦労があるのです。
天気が良いのは、とってもありがたいのだけれど。
真夏の日中、太陽の下でのたたきは、
役作りに必要ないのに、真っ黒に日焼けしてしまうことも。
色々と苦労があるのです。
でも、そうやって作ったセットを舞台上に設置していき、
そこに素敵な空間が出来上がると、苦労は報われるものなのです。
舞台美術のセットの中に入ると、俄然、その気になっちゃうよねぇ……… |
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